2025年8月22日(金)、長崎大学大学院生向け集中講義「マイクロデバイス総論」にて、TDK株式会社の大西様および藤川様を講師に迎え、磁性材料および磁気部品の活用の魅力についてご講演いただきました。
磁性材料および磁気部品の基礎と応用をテーマにした特別講義が開催されました。講師はTDK株式会社より、ハード磁性材料がご専門の藤川様と、スイッチング電源回路開発がご専門の大西様。世界的メーカーならではの視点から、材料科学と電子回路設計の最前線が語られました。
世界市場での存在感 — 日本の電子部品メーカー
冒頭、藤川様から日本の電子部品メーカーの世界シェアが約33%に達している事実を紹介。これは半導体分野とは異なり、材料開発やプロセス開発、商品開発を総合的に組み合わせることで実現した競争力の高さを示すものである説明がございました。電子部品ごとのメーカー特性にも触れ、日本が世界市場で築いてきた信頼と技術力の背景を解説いただきました。
半導体と電子部品 — 戦略の違い
藤川様は、冒頭半導体集積回路と電子部品の生産戦略の違いについて説明されました。半導体は製造装置を導入すれば世界各国で生産可能ですが、電子部品は素材・プロセス・製品設計が深く関わるため、容易には模倣できません。この特性こそが、日本メーカーの持続的競争力につながっています。

磁性材料の分類と歴史 — 日本発のフェライト
講義は磁性材料の基礎へと移り、ハード磁性材料(磁石、磁気テープ等)とソフト磁性材料(ノイズ対策部品、変圧器、インダクタ等)の性質と用途が紹介されました。特に、日本発祥のフェライト開発は世界的に重要な歴史的成果であり、磁性材料の発展の礎となったことが強調されました。
あらゆる分野を支える磁性材料
磁性材料は、情報機器、自動車、エネルギー産業など多岐にわたる分野で利用されています。藤川様は、具体例を交えつつ「目に見えないところで社会を支える存在」であることを解説し、学生に身近な製品の中にも高度な材料技術が生きている事実を印象づけました。
課題と未来 — レアアース依存からの転換
ハード磁性材料の現状課題として、重希土類元素(レアアース)依存問題が取り上げられました。これに対し、新たな合金設計や代替材料の研究、資源リサイクル技術の進展が進んでおり、持続可能な磁性材料開発の方向性が示されました。
電源回路の要 — スイッチング電源の基礎と応用
続いて登壇した大西様は、電源回路の重要性に焦点を当てられました。特にスイッチング電源について、車載分野での適用例や、電源の安定化・最適化の重要性を説明。地域や用途によって求められる性能や仕様が変化するため、それに応じた設計思想が不可欠であることを具体例とともに示されました。

マイクロデバイスの活用で進化する電源設計
大西様は、マイクロデバイスを活用することで電源の小型化・高効率化・信頼性向上が可能になることを紹介。再生可能エネルギーや自動車用電源など、応用分野の広がりが強調されました。
スイッチング電源とリニア電源 — 比較と選択
講義の後半では、スイッチング電源とリニア電源の長所・短所が整理されました。スイッチング電源は高効率・軽量化が可能ですが、ノイズ特性に課題がある場合もあります。一方、リニア電源は低ノイズ性能に優れ、特定の高精度計測や音響機器で選ばれています。学生たちは、この比較から実務的な設計判断の視点を学び取りました。
TDK㈱のご紹介
最後に田辺様よりTDK㈱様に関する紹介や働き方のご紹介をいただきました。