2025年8月21日(木)、長崎大学大学院生向け集中講義「マイクロデバイス総論」にて、日清紡マイクロデバイス株式会社の三井 健司様および彌永 大児様を講師に迎え、アナログ半導体(LDOとオペアンプ)設計の実務とその魅力についてご講演いただきました。
設計から後工程まで — 半導体開発の流れ
講義冒頭、三井様から自己紹介とともに、半導体製品が設計されてから完成に至るまでの一連の工程が紹介されました。設計段階から後工程(組立・検査)までの流れを俯瞰し、それぞれの工程で求められる視点や調整の重要性が解説されました。
また、Society 5.0の実現においてアナログ半導体が果たす役割にも触れ、超スマート社会では高効率・高信頼性のデバイスが不可欠であることを具体例とともに示されました。

電源ICとは — 安定供給と低ノイズの追求
電源IC Low-Drop Output (LDO) は、電子機器に安定した電圧を供給するための重要な回路ブロックです。三井様はその中でも低ノイズ特性の重要性を強調し、アナログ回路や高精度計測機器ではわずかな電源ノイズが性能を左右することを説明されました。
さらに、回路設計とパッケージング技術、後工程での品質保証が一体となって高信頼製品が生まれることが紹介されました。
オペアンプ設計の現場 — 彌永様の取り組み

続いて彌永様から、オペアンプ設計の流れについて詳しい説明がありました。まず仕様設計で求められる性能や動作環境を定義し、続いてウェハープロセスの選択や回路設計、さらにレイアウト設計へと進みます。レイアウト段階ではノイズ低減や安定動作を実現するための工夫が不可欠であり、設計者の経験と創意工夫が試されます。
試作から評価、そして実用へ
設計の後は、グループ内での検討会を経て試作へ。試作チップは特性評価によって仕様を満たしているか徹底的に検証されます。彌永様は、自ら設計したオペアンプが実際の製品や身近な機器で活躍していることに触れ、「設計が社会に直結するやりがい」を学生に伝えました。
MUSES — 高級オーディオ用オペアンプの開発
特に印象的だったのは、同社が手掛ける高級オーディオ用オペアンプ「MUSES」シリーズの紹介です。原音に忠実な音を追求するため、回路設計からプロセス選択、厳選素材の採用、組立技術に至るまで細部にこだわって開発されています。
また、販売支援やデモンストレーションも設計者の重要な役割であり、顧客との直接対話を通じて製品の魅力を的確に伝えることも求められると強調されました。
設計者に求められる姿勢 — 技術と顧客の双方を見る
三井様と彌永様は共に、半導体設計は机上の作業だけでなく、顧客訪問やニーズの理解も不可欠であることを強調されました。市場や用途に応じて設計の方向性を柔軟に調整し、ユーザーに価値を届ける姿勢が設計者の資質として大切であるとのことです。